句集・花粉航海

1970年1月15日初版(定価1800円) 深夜叢書/装幀:建石修志


目次:

草の昼食
十五歳/午後二時の玉突き/地上

目つむりていても吾を統ぶ五月の鷹
 ラグビーの頬傷ほてる海見ては

幼年時代
暗室の時/愚者の船

左手の古典
啄木歌集/無人飛行機/青森駅前抄

花売車どこへ押せども母貧し
 わが夏帽どこまで転べども故郷

鬼火の人
ひとさし指/髪地獄

望郷書店
車輪の下/書物の起源/中学校漂流

だまし繪
かもめ/出生譚

狼少年
わが雅歌/母音譚

憑依
魔の通過/敗北/スペインへ行きたい

テーブルの上の荒野へ百語の雨季
 旅に病んで銀河に溺死することも

少年探偵団
蜜/花粉日記

手稿


手稿

ここに収めた句は、「愚者の船」をのぞく大半が私の高校生時代のものである。
十五歳から十八歳までの三年間、私は俳句少年であり、他のどんな文学形式よりも十七音の俳句に熱中していた。
いま、こうしてまとめてふりかえってみると、いかにも顔赤らむ思いだが、「深夜叢書」斉藤慎爾のすすめを断りきれずに、公刊することになった。当時の青森高校の句会記録や、十代の俳句誌「牧羊神」をひっくりかえし、中から句を拾いだし、選んで、まとめた。湯川書房「わが金技篇」(句集)を底本にし、さらに未公刊のものを100句近く加えたのだが、読むに耐える句が何句あるかさえ、おぼつかないありさまである。今にして思えば、せめてボルヘスの小説の一行分位でも凝縮した句がほしかった。
こうなってみると、歌ばかりではなく、句のわかれもすみやかに果たしてしまいたい、というのが私の希望である。「何もかも、捨ててしまいたい。書くことによって、読むことによって」だ。

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