手紙

「ニュースレター」

昭和52年から昭和57年の間、友人のジム・ヘインズを真似て30人ほどの知人に近況を送り続けたというのが「ニュースレター」です。描かれたニュースは5年間で32通。そこには、虚構ではない彼自身の日常生活の一部を見ることが出来ます。

縁あって、学生時代に寺山修司へ詩を送ったという女性から、第1回目を含む初期のニュースレター15通(複写)を頂きました。かつて彼女は、寺山修司が選者となって出版された詩集(フォアレディー)に、何度か掲載された方でした。詩人・寺山修司にあこがれていた彼女は、長い間ファンレターを出し続けたそうです。返事が来ないなあと思っていたところ、突然ニュースレターが送られてきたといいます。

当時はワープロのなかった時代です。本人が書き留めたニュースレターの原稿を和文タイプで打ち直していたようです。彼女に送られてきたものも、タイプで打たれた原稿でした。しかし、文末には大きな文字で「寺山修司」という直筆のサインがありました。。複写したニュースレターを受け取った日、彼女は本物のニュースレターも持参し、小生に見せてくれました。

本物の「寺山修司」というサインを指でなぞりながら、
学生だった小生の手元に25年前の「ニュースレター」が届いてきた意味を考えずにはいられませんでした。

人間は、一つの言葉、一つの名の記録のために、さすらいつづけてゆく動物であり、
それゆえドラマでもっとも美しいのは、人が自分の名を名乗るときではないか。
・・・・・・「家出のすすめ」